Angelinaや、その他、いろいろ考察

「お手柄だ。そして笹木邸をあたってみたかい、多田君」
「早手廻しに、若主人の笹木|光吉というのを同道して参りました。ここに大体の聞書を作って置きました」
 そう云って、多田刑事は、小さい紙片を手渡した。警部は獣のように低く呻りつつ、多田の聞書というのを読んだ。「よし、会おう」
 案内されて、室へ静かに姿をあらわした笹木光吉は、三十に近い青年紳士だった。色は黒い方だったが、ブルジョアの息子らしく、上品ですこし我が強いらしいところがあった。
「飛んだ御迷惑をかけまして」と大江山警部の口調は丁重を極めていた。「実は部下のものが、こんなものを(と、二個の薬莢と一個の弾丸を示しながら)拾って参りましたが、薬莢の方はお邸の塀下に落ちて居り、弾丸は、ここに地図がありますが、線路を越してお邸の向い側にあたる草叢から拾い出したのです。お心あたりはございませんか」
 そう云って刑事は、白い西洋紙の上に、三品をのせて差し出した。多田刑事は、課長の出鱈目に呆れながら、青年の顔色を窺った。
「一向に存じません」と笹木はアッサリ答えた。「指紋が御入用なら、遠慮なく本式におとり下さい」