Angelinaや、その他、いろいろ考察

「お手柄だ。そして笹木邸をあたってみたかい、多田君」
「早手廻しに、若主人の笹木|光吉というのを同道して参りました。ここに大体の聞書を作って置きました」
 そう云って、多田刑事は、小さい紙片を手渡した。警部は獣のように低く呻りつつ、多田の聞書というのを読んだ。「よし、会おう」
 案内されて、室へ静かに姿をあらわした笹木光吉は、三十に近い青年紳士だった。色は黒い方だったが、ブルジョアの息子らしく、上品ですこし我が強いらしいところがあった。
「飛んだ御迷惑をかけまして」と大江山警部の口調は丁重を極めていた。「実は部下のものが、こんなものを(と、二個の薬莢と一個の弾丸を示しながら)拾って参りましたが、薬莢の方はお邸の塀下に落ちて居り、弾丸は、ここに地図がありますが、線路を越してお邸の向い側にあたる草叢から拾い出したのです。お心あたりはございませんか」
 そう云って刑事は、白い西洋紙の上に、三品をのせて差し出した。多田刑事は、課長の出鱈目に呆れながら、青年の顔色を窺った。
「一向に存じません」と笹木はアッサリ答えた。「指紋が御入用なら、遠慮なく本式におとり下さい」

石黒賢のレビュー

千二は、もう一度同じような調子で言った。
 すると、眠っていた丸木は、ぶるぶると長い手足をふるわせた。と思うと間もなく、丸木は大きな頭を持ち上げて、ぐらぐらとふった。それは、まるで猫がひる寝から目がさめて、背のびをする時のかっこうに、よく似ていた。
「おお、もうそんな時間か」
 丸木はそう叫ぶより早く、体をぐっとちぢめると、床の上を目にもとまらぬ早さで這出した。そうして、あっと思う間もなく、かたわらにおいてあったドラム缶のような、胴の中にとびこんだ。胴はたちまち左右から寄って、ぱちんと、しまってしまった。
 すると、胴中に生えていた手足が、急に勢いよく、ばたばた動き出した。そうして、かたわらにおいてあった首の方へ手をのばすと、それをひょいと肩にのせたのであった。――とたんに、完全な丸木氏が出来あがってしまった。
 不思議な丸木の朝の日課であった。
 千二少年は、少しも驚く様子がなく、そばにじっと立っていた。
 不思議な日課を終えた丸木は、減圧箱の中から出て来た。
 そこで彼は、減圧箱を足でぽんと蹴った。
 すると減圧箱は、ゴム風船がちぢむ時のように見る見る小さくなった。そうして誰もさわらないのに、ポストぐらいの大きさのものになると、ことことと音を立て、ひとりで部屋のすみのところへいった。

カヴァレリアトスカーナへの見解

それは刑務所で入札の結果、本年も紙風船は丸福に落ちていたのだった。だから柿色の紙風船は、この店にあるより外に、行く先がなかった。売れたのかしら?
「……もう風船はないのですか」
「唯今、これだけで……」
「そうですか。どこかにしまってあるんじゃないですか」
「いいえ」
 小僧さんは悲しいことを云った。
 私はガッカリして、立ち上る元気もなかった。そのとき奥から番頭らしいのが、声をかけた。
「吉松。さっき、あすこから来たのがあるじゃないか。あれを御覧に入れなさい」
「ああ、そうでしたネ。……少々お待ち下さい。今日入った分がございましたから」
「今日入ったのですか。ああ、そうですか」
 私は悦びに飴のように崩れてくる顔の形を、どうすることも出来なかった。小僧さんは、大きいハトロン紙の包みをベリベリと剥いた。
「これは如何さまで……」
「ああ――。」
 私は一と目で、柿色の紙風船が重なっているところを見付けた。
「あ、こいつはお誂え向きだ。こいつを買いましょう。」
 私は十円|紙幣を抛り出して、沢山の風船を買った。小僧さんが包んでくれる間も、誰かが邪魔にやって来ないかと、気が気じゃなかった。だがそれは杞憂にすぎなかった。
 私は風船の入った包みをぶら下げて、店を出た。ところが店の前を五六間行くか行かないところで、私はギョッとした。私の顔見知りの男が、向うから歩いて来るのである。それは帆村という探偵に違いなかった。

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一乗寺賢(朴路美)のinformation

松の木の根もとを掘ると松露というまるいきのこが出て来ることがあるが、それを、もう一そうでこぼこしたような感じの顔であった。目は三つあったが、正面から見ると二つしか見えないから、これは人間の顔とそっくりであった。もう一つの目は顔の後にあった。だから、後を見ようと思えば見える。
 目のついているところは、河馬の目のように、ふくれあがっている。そうして目玉が大きく、ぐりぐりとよく動く。どっちの方角もよく見える。
 あたまの上には長い毛のようなものが生えているが、これは毛ではなさそうだ。毛よりももっと太い。そうして、たこの足のようにどっちへでもよく動き、のびたりちぢんだりする。いつもは、この先が蔓のようにくるくるとまいている。これは一種の触角であるらしい。麦わら帽子の下からこの動く蔓が出て、にょろにょろしていて、気味がわるい。
 目の下には、人間のように鼻がない。そうしてすぐ口のようなものがある。口というよりは、くちばしといった方がいいかも知れない。

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